通常の玄能と違い、打面にギザギザの筋が入っていて本の背によく引っかかるようになっている。これで本の背をトントン叩いて背を丸くし耳を出すのだ。
これなども、あると職人ポイというか所有欲を刺激するアイテムの一つである。
売っているところは分っているが、2,836円の玄能を素直に買えない。一度は代用品を探さないと気がすまない。言い換えると創意工夫するとも言えるが、根が貧乏症なだけかもしれない。とにかく探してそれらしい物を見つけた。市販の玄能でも『角箱屋金槌』とか『仮枠ハンマー』というものは、打面にギザギザが入っていていることが分った。
製本用玄能のギザギザは横スジだけど、680円くらいで買える市販の玄能のギザギザは格子状。これで差し障りがあるだろうか。柄の長さが違うのは切れば良い。反対側の釘抜きは製本では使わないけど有っても良いじゃないか。
そんな事を考えていたら、道具箱にギザギザ金槌があることを思い出した。なぜこういうものが我家に存在するのか経緯は分らないがあったのだ。
柄を短くするとそれらしく見えるので切った。次に柄の納まり具合が具合がよくないので差し替えることにした。柄を抜いてグズになっている部分を切り落として驚いた。 「太い!」
調べると玄能・槌の柄は、抜けにくくするため、【木殺し】して入れる。
木殺し(きごろし)は伝統的木工技術の一種。ホゾ組みなどの際に、ホゾを玄翁で叩くことで圧縮することで組みやすくする。組んだ後で木の復元力によってホゾが膨らみ、接合力が強化される。叩きすぎるとホゾが割れるので注意。
というのだけれど、隣の公園に行きトントントントンやることになる。だけど、こんなに圧縮できるのか疑問。
自信が持てないし、【木殺し】できるほどの大きなハンマーが無い。
伝統技術に行く手をさえぎられ一旦中止とする。