新潮社の紹介コピー。
伸坊さんとイトイさん、1歳違いの昔馴染みが出かけた小旅行。春雨に煙る鎌倉を発ち、初秋の日光、イーハトーブの花う巻へとめぐる。行き交う話題は、驚くべき蛸の能力や、迦葉山の天狗の気持ち、治療師のボスが呟く言葉の謎……とりとめもなく魅惑的で、行く先々に笑いの花が咲き誇る。
面白いオトナふたりのめくるめく無駄話。「ほぼ日刊イトイ新聞」が生んだ素晴らしき雑談紀行。
「めくるめく」って漢字で書くと【目眩く】。目がくらむ。めまいがする。ということだけど。これを読んでめくるめくかなー。
私はめくるめくと言えば愛人。『愛人とのめくるめく愛の逃避行』だな。
伸坊とイトイ(同年と年下だから呼び捨てるが)は、愛人関係に無いし逃避行でもないから、当人たちもめくるめいてはいない。 ただ、いつものようにグダグダ話しているだけだと思う。
『めくるめく無駄話』だからよいようなものだけど、これを読んで『めくるめいた』などという反応は出ない。
読んで、すーっと受け入れる。フム、フム。そしてニヤリとする。くらいの反応が普通。それができない人はこれを買わないし読まない。そういう本だと思う。
二人の会話は私の感性をくすぐる。ニヤニヤしてしまうので電車の中で読むと不審なオヤジだ。
「にべ」「おだ」 の語源を語る行は文句なく嬉しい。そういうことが気になって調べる気質は我と同類だもの。
「おだ」はぬかった。調べていない。そうか、小田原評定に関係有るのか。
鼎談気分で読んでいるのだけれど、私を加えて鼎談にしてもらえぬだろうか。と、思ったりする。
蛸のネタを取り合う行が特に好きだ。
伸坊が蛸のネタを持ち出すと、イトイが
「オレも、その話がしたかった」
「そんなこといわれても・・・」
「オレのほうが伸坊よりもその話がしたかった」
「 そんなこといわれても・・・ 」
「オレも言いたい。伸坊の手柄をとるわけじゃないんだ」
「食い下がるね」
「なら、他のなにかを譲ってもいい」
「じゃ、クラゲをゆずるか」
これがまだまだ続き、ついにイトイが蛸の話をした。そして
「な。な。オレに蛸の話をくれてよかっただろう」
「うん。よかった」
いいなー。
イトイの 話したい感、伸坊の たじたじ感が好ましい。
私が蛸のネタを持っていたらややこしいことになるけど、運良く蛸のネタは持ち合わせていないので丁度良い。流れに乗って合いの手を入れたり、茶化したりすることはできると思う。
私は、この会話に加わりたい。
だけれど、私にはこのグダグダ感が足りないのよ。
すべて足りません。
私も加わりたい、愛想笑いしながら。
たまには、こういうグダグダしたものも良いものですよ。