過日、声楽の楽譜の持ち込みがあった。先輩二人が対応し本人の意向を確認。
「綺麗になりますよ」「有難うございます」という会話の後に突如、我が名が登場。
「こういうのは、HS川さんが得意だから」
余りに突然。 急にふられても・・・・・・。
持ち主の眼前で「私は、やりたくない」とは、言いにくい。和やかに期待が盛り上がっているのに、そんなことを言い出せば私は非情な極悪人である。
で、私が修理することになった。
一生懸命修理するが、正直言うと、個人の所有物の修理は安易に受けられないと、最近思っている。
個人所有のものは思い入れが強く、年代モノが多い。
これまでに修理を引き受けた先輩諸氏は、艱難辛苦、刻苦勉励、七転八倒、四苦八苦している。要するにボロいのだけど、その苦労を見るにつけ、そう思うようになった。
もはや、それはボランティアの域を越えている。
図書館の本の修理は気楽で良いというのではないが、基本的に手に余ると思えば触れないでおける。了解が得られれば未知の領域にチャレンジするという選択肢もあるが、廃棄処分もありうる。
誤解を恐れず記すが、『個人の所有物は、プロの工房で対価を払って修理すべきだ』と思う。
私は工房をするつもりは全く無いし、対価が欲しい訳でもない。
私の技量はそれ位だし、私の親切心もそれ位なだけだ。悪いけど。
持ち主がお金を掛けてまでは修理しない、というのであれば〝思い入れ〟も、それ位なのだから意見は一致するではないか。
てなことを言っていても、綺麗に修理できれば嬉しいものだ。これなら喜んでもらえそうだ。
作り直した〝背〟の下部に、イタリア歌曲集だからと、チョッとお遊びしたのはよいけれど、並び順が逆になっちゃった。言い訳すると、横書きで CANTI・・・Basso と入力し、上から緑・白・赤と色をつけたのよ。それを背に貼って本を立てたらこうなってしまった。
イタリア国旗ではなく、イタリアンカラーということで・・・。
昨日、お渡ししました。
昭和40年代の学生時代の楽譜で、今も利用されるとのことで、それはもう、大層お喜びでありました。