それでは
野田佳彦首相は24日の都内での講演で、TPP交渉参加を検討している日本の立場を、英人気ロックバンドのメンバーに例えて説明、政府の方針に理解を求めた。
「環太平洋連携協定(TPP)はビートルズだ」。
「TPPはビートルズだ」というのは、意外性という意味で〝つかみ〟としては満点。
その後で「なるほど!」と思わせれば、うける。名演説になる可能性を秘めている。
展開に期待が高まる。
首相は「日本はポール・マッカートニーだ。ポールのいないビートルズはあり得ない」と強調。その上で「米国はジョン・レノンだ。この2人がきちっとハーモニーしなければいけない」と述べ、日本の交渉参加への決意を重ねて示した。
「なんのこっちゃ」と思ってしまったら、主題のTPPはそっちのけ。意識は突っ込みに向いてしまう。
米国はジョン・レノン?彼は英国人だろう。米国だったら、エルビスプレスリーじゃないのかい。
それに、ジョン・レノンは日本人オノヨーコがからんでからポールと仲たがいして、ビートルズは解散した。
TPPの将来を、解散まで織り込んで暗喩しているとなると、野田首相は比喩の達人なのだけど、そんなことはなさそうだ。
比喩の天才、師・赤瀬川原平のお言葉を引いて稿を閉じる、
人間だから、生きていれば何か言いたいことがある。でも論理が展開できない。頭の知識はカラだ。すると言いたいことが頭というより体からじかに、ものを伝わって出てくる。「それはたとえば・・・・」となってくるのが比喩である。論理ではなく、現物から現物への、一種の物々交換。
(比喩は稲妻である)
上質の比喩はこの境地から誕生する。