製本&修理:スキル

3-719) 天地が逆の本の再修理(背割れ)

磯子図書館本の修理。
開始前に「これなんですけど・・・」 と、さしだされた大冊の写真集は背の天が破損しており、数ヶ所で背割れしている。
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The Art of PHOTOGRAPHY:1839-1989(1990年刊)


「背割れもですけれど、天地が逆なのです」
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以前、修理した誰かがつけ間違えている。
苦々しい。
詫びた上、今後はこういうことがないように周知徹底いたしますと、政治家のような返答をした。
政治家と違うのは私が責任をもってなおすこと。

手を付けると、天地間違いの他にも杜撰な修理が見えてきた。
製本時の接着剤の上にボンドを厚塗りしての強引接着。寒冷紗は取り替えていない(結果的には有り難いのだが)ので劣化してもろい。それで、再度のパックリ割れなのだ。
勢いで杜撰と言ったが天地間違い以外は杜撰ではなく、当時は軽度の破損だったのかもしれぬ。

さらに、綴じ糸が緩んだ折丁をボンドで貼ってあるが、天地がズレている。これは杜撰。
綴じ糸を切らぬよう注意しながら、スパチュラを差し込み折丁を分離。天地を揃え再接着。

仔細に見ると、幸い綴じ糸は切れていないから綴じなおす必要はない。このまま背を固めることにした。この大冊を綴じなおすことになったら大仕事だ。やれやれ。


まず、背の接着剤を剥がす。
背に出ている綴じ糸の箇所に目印を付け、目打ちを使って細心の注意を払いながら、綴じ糸を切らぬように少しずつ少しずつボンドを剥がしていく。
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ボンドを上塗りしているが、その下に残る製本時の接着剤は粘着力が落ちているので、折丁を破損することなくポロリと剥がれる。寒冷紗も劣化しているからボンドの破片サイズで剥がれる。そのおかげで綴じ糸の列を傷つけること無く剥がせる。
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目打ちを使って細心の注意を払いながら少しずつ少しずつ剥がす。

合間に他用が舞い込むので本日の作業はここまで。


そういえば、こういう時の接着剤で質問が来ていた。さてどうするかなあ。










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by ikuohasegawa | 2016-04-15 04:30 | 製本&修理:スキル | Comments(0)

十や十五連休なんて目ではない。三百六十五連休が始まった私。


by ikuohasegawa