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4-160) 平綴じの本

修理にまわってきた神奈川県百科事典。

修理指示書には「表紙の傷みと折り込み図版の破れ」とある。
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鉄則どおり指示以外の箇所も確認する。

奥付を見ると、1983年の発行日付の下には定価28.000円。オーーッ。
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34年前の大冊の場合、利用頻度も関係するが・・・本文がノド割れしていても不思議はない。それなのに割れていない。

ノド割れとは、こんな感じの破損です。
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詳細は省くが、ほとんどの本は全折り丁の背をボンドで接着、もしくは、折り丁を糸で綴じて一冊にまとめて製本する。ボンドの劣化や細い綴じ糸が切れるとノド割れすることがある。
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緑が綴じ糸。赤は接着剤。

「それでは依頼品を見てみよう」
よくよく見ると、ノドの奥に綴じ糸が見える。
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表紙ウラの見返し部分にも綴じ糸が見える。
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そうか、平綴じ製本だ。
平綴じ製本は本のノドの近くを表面から綴じること。
この綴じ方だと太い糸を使うので堅牢な綴じになる。ただし開き難くなる。
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印刷会社の用途例に「一部の教科書、報告書、取扱説明書、企画書、少年週刊誌等」と記載されているように、平綴じは比較的簡易な製本で、ハードカバーの本に使われることは、ほとんどない。
私も平綴じのハードカバー仕上げの本は初めて見た。合本のような仕立てだ。

合本(がっぽん)とは、出版された書籍や雑誌などを数冊とりまとめて1冊に製本することをいう。綴じ仕様にブッコ抜き綴じ※1・無線とじなどがある。一般的には厚表紙が使われ諸(モロ)製本※2仕立てとなる。(製本用語集による)
※1 平綴じのことで、特に雑誌などの定期刊行物を合本するときにブッコ抜きという。
※2 諸製本 注文により一冊々々を製本するもの。諸本をつくる職人を「もろし(諸師)」と言っていた。現在「諸本、諸製本」という言葉は使われず、「図書館製本」がこれに該当する。雑誌などの合本・破損本の修復・論文の製本・改装など注文主の好みに従い1冊1冊、上製本に仕立てる。一般には手綴じ(手かがり)で製本する。欧米では「ルリュール」が製本工房としてパーソナルな出版・図書館製本等をおこなっている。(製本用語集より)

おそらく、堅牢な事典を作りたいという神奈川県百科事典刊行会の要望に応えたのだろう。
したがって、ページレイアウトの時点で見開きのノド際の余白を大きくとってあるので、ノド側が読み難いということはない。







by ikuohasegawa | 2017-07-02 04:15 | 製本&修理:関連 | Comments(4)
Commented by ikemoto04lp at 2017-07-02 06:15
本の堅牢なつくりに感心するよりも、「神奈川県百科事典」なるものがあることに感心させられました。
Commented by ikuohasegawa at 2017-07-02 08:15
アルチュさん
47都道府県のうち三重県・大阪府・奈良県・和歌山県を除く43都道府県の百科事典が発行されているそうです。どういう訳か、近畿地方に固まっています。

どういう訳か2、1980年頃の数年間に集中して発刊されています。
何があったのでしょうねえ。
Commented by saheizi-inokori at 2017-07-02 09:37
なるほど、奥が深いですね。
書誌学にまで及ぶ。
Commented by ikuohasegawa at 2017-07-03 05:19
saheiziさん
書誌学だなんて。それほどのことではありません。
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