製本&修理:関連

4-796) 背表紙の内にあったのは

「冨山房・新築落成記念」の修理を開始するのは、年明け暖かくなってからとする。
それでも気になるのでジックリ見ていると、なにやら常とは異なる個所がある。

本の背部分内側に、印刷文字が見える。
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接着剤(おそらく膠)で固めた本文の背と、背表紙の裏側にあたる部分だ。
製本でこんなところに印刷物を使うことはありえない。と現代人は思う。しかし、当時はそれが当たり前だったのかもしれない。
背固めに使った紙は「販促用チラシ兼注文書」のような物だ。
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国会図書館データベースで検索する。キーワードは 著者の服部宇之吉、小柳司気太。
國漢参考圖繪志那音索引附。四六版二四〇〇頁。
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刊行年から、あたりを付け更に進むと
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二四〇〇頁にだいたい合う2243P。
四六版といえば127×188㎜。表紙を付ければ。約20㎝。ほぼ、これだろう。


背表紙の裏側の紙(写真右側)は、horizontalとか水平、地球、磁場などと読めるから物理関係の印刷物だろう。
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これらが出版された昭和11年といえば2.26事件勃発の年。翌昭和12年には太平洋戦争開戦。
まさに戦争へと突き進んでいた頃。そんな時代が生んだ製本職人の節約技なのだろうか。
掛軸はともかく屏風・衝立の内側に古紙を使うのは表装では当たり前のことだから、変だとは言えない。

修理前に色々と発見があり面白くなってきた。

この稿、更に続く


Commented by nicoru1nicoru2 at 2018-12-29 06:27
ついに「四畳半襖の下張」の様相を呈してきました。事件にならないように願います。
Commented by ikuohasegawa at 2018-12-29 07:39
古武士ヒロくん
襖の下張から出てくるのは春本だよ。
冨山房の話題にはふさわしくない例えです。
Commented by nicoru1nicoru2 at 2018-12-29 07:55
ハイ。朝っぱらから失礼でした。
仕事納めを済ませて、近年まれに見る長期休日に、惑乱してしまいました。
Commented by saheizi-inokori at 2018-12-29 10:10
私も不謹慎な連想をしてしまいました。
ミステリめいて楽しいですね。
Commented by ikuohasegawa at 2018-12-30 05:36
saheiziさん
ただ検索をしているだけですが、謎解きしているような気分を味わっています。
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by ikuohasegawa | 2018-12-29 04:15 | 製本&修理:関連 | Comments(5)

十や十五連休なんて目ではない。三百六十五連休が始まった私。


by ikuohasegawa