「冨山房・新築落成記念」の修理を開始するのは、年明け暖かくなってからとする。
それでも気になるのでジックリ見ていると、なにやら常とは異なる個所がある。
本の背部分内側に、印刷文字が見える。
接着剤(おそらく膠)で固めた本文の背と、背表紙の裏側にあたる部分だ。
製本でこんなところに印刷物を使うことはありえない。と現代人は思う。しかし、当時はそれが当たり前だったのかもしれない。
背固めに使った紙は「販促用チラシ兼注文書」のような物だ。
国会図書館データベースで検索する。キーワードは 著者の服部宇之吉、小柳司気太。
國漢参考圖繪志那音索引附。四六版二四〇〇頁。
刊行年から、あたりを付け更に進むと
二四〇〇頁にだいたい合う2243P。
四六版といえば127×188㎜。表紙を付ければ。約20㎝。ほぼ、これだろう。
背表紙の裏側の紙(写真右側)は、horizontalとか水平、地球、磁場などと読めるから物理関係の印刷物だろう。
これらが出版された昭和11年といえば2.26事件勃発の年。翌昭和12年には太平洋戦争開戦。
まさに戦争へと突き進んでいた頃。そんな時代が生んだ製本職人の節約技なのだろうか。
掛軸はともかく屏風・衝立の内側に古紙を使うのは表装では当たり前のことだから、変だとは言えない。
修理前に色々と発見があり面白くなってきた。
この稿、更に続く