カテゴリ:製本&修理:スキル( 166 )

4-693) 磯子図書館本の修理 綴じ糸の切れていない図鑑

参加者はやや少なめ───私自身、夏休みで一ヶ月ぶりの参加だから大きなことはいえないが───でした。
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この日、最初に手がけたのは福音館書店の植物記。
糸綴じ製本なのに表紙は薄手の並製本というあまり目にしないタイプの図鑑。
そのため、この図鑑はせっかくの糸綴じ製本なのにノドまで完全に開かない。

まずはおさらい。
上製本は本文の背と表紙の背の間に隙間をつくり、本の開閉時には別個に動くようになっているからノド元まで開く。
ホーロ・バックと言われる。
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一方、並製本(文庫本や新書本などと同じ)は本文の背と背表紙接を接着し固定する。
ノド際まで開きにくいフレキシブルバック。
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この図鑑は綴じ糸が切れていれば綴じなおすことになる。

見返しを外して本文を取り出すと有り難いことに綴じ糸は切れていない。
しかし、背と本文を接着している接着剤は開閉に耐えられず割れて断片化している。
糸を切らぬよう接着剤(固)を取り除き、背を板で挟みボンドで固めることで弛みを戻す。
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接着剤をきれいに剥がした後の写真


次いで寒冷紗を貼って、クータを足し本文の背と表紙の背の間に隙間をつくる。
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背に戻して張り出している寒冷紗を、見返しで貼り押さえる。
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本文のノド際ラインに見返しを貼って修理完了。
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一応、ホーロ・バックに仕上がっています。

by ikuohasegawa | 2018-09-17 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(2)

4-690) ブック型メモ帳を豆本にします

御嶽海勝ち星日記。
大相撲秋場所五日目。

この日も御嶽海は強さ巧さを見せ、栃ノ心を寄り切り5連勝。
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辛口解説の北の富士さんも「御嶽海、強いねえ」

上位6力士のうち、まず大関を撃破。


さて、MARUMIZUGUMI の豆本キット「おりがみミニブック」は商品説明で「可愛いブック型メモ帳」と呼びかえられている。

理由は、バラバラに分解しやすいボンド固めの背に予防線を張っているのだ。
一枚ずつ取れても「メモ帳って言ったでしょ」って言えるように。

しかし私は本文を平綴じ製本し一枚ずつ取れなくして、あくまでも「可愛い折り紙ブック」を目指します。


100枚一組のミニおりがみの背をボンドで固め、20枚ずつ5組に分けドリル(1.5㎜)で綴じ穴をあける。
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平綴じします。
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平綴じの注意点:
①一つ内側の穴からスタートします。(この豆本の場合は3穴ですから一つ内側の穴は中央になります)
②横糸をまたいで結びます。(綴じ穴が増えても最後は横糸をまたいで結ばないと固定できません)

剥がして取れるメモ帳がバラけない本文になりました。
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今日はここまで。



by ikuohasegawa | 2018-09-14 04:17 | 製本&修理:スキル | Comments(2)

4-617) 喰い裂きで和紙を切る

既報のとおり豆画集の本文には「足」をつけ「枕」を貼ることにした。
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図の赤い斜線部分が「足」で、その右側の小片が「枕」
枕に穴を開け平綴じします。
材は「足」和紙「枕」本文と同じ厚さの用紙。

こうすれば、厚紙の本文用紙を平綴じしても本文は開ける。

せっかく和紙を使うので「喰い裂き」をする。
喰い裂きとは、和紙の裁断方法の一つ。
カッターやハサミなど刃物で裁断すると切り口がシャープになって、貼った箇所に段差ができてしまう。それを回避するために喰い裂きをするのです。

喰い裂くとは、元々、肉食動物が口にくわえて裂く、または、かみついて裂く意ですから、無理やりというか強引さが含まれます。方法としては、紙を濡らして(少々強引に)引き裂くことになります。

今回は厚紙の間に貼るので段差が表に出ることはないが、スキル維持ということだ。


それでは、喰い裂き開始。
寸法に定規をあて水を含ませた平筆でラインを塗らす。
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定規に沿ってヘラを往復させたあと慎重に引き裂いていく。
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繊維が毛羽だった切り口は、和紙の厚さが漸減しているのでラインとして出ない。
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一般図書の破れ補修は専用和紙テープを使うが、古文書類は喰い裂きした典具帖(てんぐじょう)など薄い和紙を和糊で貼って補修します。
また、古い時代には、喰い裂きした端を繋ぎ大判の和紙つくっていたようです。
















by ikuohasegawa | 2018-07-04 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(2)

4-506) 豆絵本の製本手順を確認

小学校の修理メンバーに豆絵本「しば君のぼうけん」を作ってもらうにあたり作り方の手順を確認する。

本文用紙を見開き1枚ずつに切り出す。
このとき、いきなり短冊状に切り離すと次にカットする目印のトンボが無くなる。
周囲を残して切れ目を入れ、次の直角方向カットで切り離します。
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切り出した本文を内折り(印刷面を内側)で二分の一に折ります。表紙用紙は後述。

内折りVの外側(無地面)の小口10ミリとのど側10ミリにスティックのり(以下のり)を塗り、貼りあわせる。
このとき、小口と天もしくは地を揃えて、サイズの誤差は背と地もしくは天に出す。
(背は内部になり誤差は見えなくなる。一辺に誤差を集め醜いようなら最後にカットする)
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束になった本文の背を寒冷紗で補強する。
寒冷紗のサイズ。縦は本文天地より少し小さ目、横は5ミリ+本文の幅+5ミリ。
注:普通サイズの絵本の場合は可動域を確保するために、寒冷紗の上からクータを貼るが豆絵本なので省く。

この本文の束を外側からくるむ表紙は外折りにするが、本文の厚みがあるので型に現物合わせで折る。
このときオモテ表紙とウラ表紙の絵がそれぞれ極力中央になるように位置を定める。

本文の小口10ミリと、のど側10ミリにのりを塗り表紙のに接着します。
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最後に本文より飛び出している表紙の小口をカット。
天地小口の不揃いはカットするか、紙ヤスリで調整できるが・・・自信がなければ手作りの味わいと、そのままも可。

この製本はお子さんやお孫さんが描いた絵・・・サイズが同じなら、を一冊にまとめるときにも使えます。


by ikuohasegawa | 2018-03-15 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(0)

4-341) ノリひき紙を使いましょう

本年も今日一日となりました。

さて、ページ外れの修理は外れたページのノド際に約3ミリ幅でボンドを塗り貼り込む。
(注:絵や図が見開きにわたってある場合は、絵や図を生かすため専用和紙テープや専用クリアテープを使います)

そのときは、敷き紙と「ノリひき紙」を使ってボンドは筆で塗り広げ、接着ラインを直線にしなくてはいけない。
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さすが暮れですね新聞折込物も正月関連。


外れたページの上にあるのが「ノリひき紙」。下に敷いてある赤い宝船の紙が「敷き紙」です。


ノド際に容器の細口から直接ボンドを流し込むこともあるが、そのときも「ノリひき紙」と筆を使って塗布ラインを直線にしなくてはいけない。
筆と「ノリひき紙」を使わないことが進歩か工夫したかのように思えても、それは錯覚です。

どんなに細口の容器でもボンドは均等に出ない。
始めはぐっと出て徐々に少なくなり、また力を加えるのでぐっと出て、このくり返しになる。
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この状態で圧着すれば、ボンドの大きく広がる個所が出来て版面側に侵食する。かつ、接着ラインは凸凹になってしまう。ボンド容器の細口を過信してはいけない。
「ノリひき紙」と筆を使ってボンドを均一にのばし塗布ラインを直線にしなくてはいけない。

また「ノリひき紙」は使い回しせず一回で廃棄すること。

チラシ広告などを短冊状に切って使うが、ひとり修理で連続して「ノリひき紙」を使ったとき思いつきました。
チラシを切って束にしておくより、無線綴じ(接着剤固め)のカタログ誌を寸法で断裁しておく方が始末が良い。一冊にまとまっていますから。
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この一年も有難うございました。

それでは皆さん、良いお年をお迎えください。













by ikuohasegawa | 2017-12-31 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(8)

4-335) 薄い本文を表紙に接着する

プレス機にクリスマスリース。
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ええ、私は敬虔なクリスマス教徒ですから。


さて、再修理に来た小型絵本・汽車のえほんシリーズの「ダックとディーゼル機関車」
前の修理では、綴じなおした後、背に貼った寒冷紗の羽を見返しで押さえて結合していた。
その、寒冷紗から本文が脱落しての再修理である。

前の修理の寒冷紗などを取り除く。

表紙の外にカバーがかかって、その上からブッカーで保護してあったので気付きにくいが、表紙のミゾ部分が裂けていた。
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前の修理の綴じなおしは完璧で、どなたの手になるものか確認したいくらいの仕上がり。
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堅牢で美しい。
ただし、表紙との結合が弱かったようだ。

こういう薄い本文を表紙と結合するときは、前に試みた薄い本文を表紙に接着するを施すべきだ。
背に貼った寒冷紗を貼り込むとき、羽に切れ目を入れて羽と表紙に交互に貼るというのがその結合方法。
今回はさらに和紙で本文を補強した。

下図の橙色が補強の和紙。
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立ち上げた寒冷紗(緑色)を本文に直接貼ったとき部分的にかかる力を、本文用紙全体に分散して受け止めることになる。









by ikuohasegawa | 2017-12-25 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(4)

4-330) 無線綴じのハヤカワミステリーを修理する③

ハヤカワポケットミステリーの修理。

綴じなおした本文を長持ちさせるためにクータと寒冷紗を入れたい。
さらに付加した寒冷紗を隠すために見返しを足したい。
同書は並製本なので見返しは無く、本文を柔らかい表紙で包んでいるだけです。
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問題なのは元の製本時に無かった物を加えると、その分本文が大きくなって表紙から小口がはみ出すこと。
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その対応としてオモテ・背・ウラと一連になっている表紙を切り離し表紙を大きくする。
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本書の場合は、はみ出しが少ないのでウラ表紙にのみスリットを入れた。

間に布テープを足し、表紙と本文の小口を揃えた。
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スリット保護のため全体にブッカーを掛けなおしました。
 
かくして、並製本の修理ながら見返し付きフォローバックで仕上げました。
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ノドの奥に背に渡した糸が点々と見えます。





by ikuohasegawa | 2017-12-20 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(8)

4-326) 日本版ペーパーバック・ハヤカワミステリーを修理 ②

ハヤカワポケットミステリーを修理する。
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本文全体を「包み表紙」表紙から外す。

元の接着剤の上にボンドを重ねても接着効果は期待できないから、普通なら元の固化した接着剤を苦労して剥がす。ところがこの冊は楽々板状に剥がせた。まるでプラスチックの板。
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露出した背には切れ目が入れてあったが浅い。
剥がした板状接着剤にそれと対になる筋も見てとれる。
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この程度では本文の単票はまとめきれぬ。接着剤そのものは強固でも接着力は限定的だったと言わざるをえない。

強固に接着するための手順は、
本文用紙を揃えズレを防ぐ帯を掛けて固定板ではさみ、荒目のヤスリで背を荒らす。
荒目のヤスリを使うことで紙に凹凸が出来、新しく塗るボンドの付きが良くなる。
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さらにのこぎりで深め(3‐4mm)に目引きをする。
糸を渡して接着し、背全体もボンドで固める。
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つづく。







by ikuohasegawa | 2017-12-16 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(5)

4-324) 日本版ペーパーバック・ハヤカワミステリーを修理

ハヤカワポケットミステリーは確か小口天地を黄色く染めていたはずなのに、それさえ見えぬほど激しい紙面の黄変。
海外のペーパーバックを意識した装幀製本とはいえ、劣悪な紙質まで真似たのだろうか。

これでも2006年版である。
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この「真夜中への挨拶」の修理指示書には『ページ外れ P146~P150』とあったが、連続するページを軽く引くだけで次々と外れる。
紙だけでなく製本もペーパーバック並だ。

これはもう、全てのページを単票にばらして無線綴じ(糸綴じをしない)をする以外に手はない。


ノド割れやページ外れの全面的無線綴じ修理をするときは、
5か所に切れ目を入れてタコ糸を渡すより
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14か所に施した方が強度は増す。
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さらに、背を荒らしてボンドを含浸させるともっと強くなる。
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手順としては、荒目のヤスリので背を荒らす。
さらにのこぎりで目引きをする。
糸を渡して接着する。
荒らした背全体にボンドを塗り込み、背固めする。

つづく。




by ikuohasegawa | 2017-12-14 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(6)

4-309)並四小 本の修理 薄い本文と表紙の結合

普通、並製本の本を分解して背を修理した場合、背に寒冷紗を貼り見返しで表紙と結合する。※厚板紙の表紙が無い製本を並製本という。
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修理した「点字であそぼう」はノド割れしていたので平綴じをしたのだが、表紙との結合を背に塗ったボンドに任せても強度不足だと思った。
なんせ本文の背幅は6㎜しか無いのだ。


この日・・・前から何とかしたいと思っていたのです・・・ひらめいた。
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背のボンドの他、本文の一部を寒冷紗で抱え込む。

方法は、本文の背に貼った寒冷紗の羽(背幅から張りだした部分)に切れ目を入れて、表紙裏と本文に交互に貼る。
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こうすれば、幅6㎜だけで結合していた背は(半)寒冷紗の補強を得て強固に結合できる。
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本文貼り付け側の寒冷紗は、見返しのノド部を本文に貼り戻した時、隠れるくらいにカットしておきます。
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ということで「点字であそぼう」の修理完了。

自分で言うのも何ですが、これは中々の修理法です。


一折中綴じの絵本(別見返しの場合)などは中綴じをする前に、寸法を合わせてカットした寒冷紗をセンター合わせで折丁の背に接着(センターラインのみ)し、寒冷紗ごと綴じることもあります。
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こうすれば、薄い一折中綴じの絵本本文も表紙に結合できます。

これも中々の修理法です。







by ikuohasegawa | 2017-11-30 04:15 | 製本&修理:スキル | Comments(2)